「聖戦士ダンバイン」で分かる「タテ社会」と「家の論理」【前編】

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聖戦士ダンバインというアニメをご存じでしょうか?

ドラゴンクエストのブームよりも先に、中世ヨーロッパを思わせる異世界を舞台に設定した作品であり、

現代の日本で生活していた主人公が異世界に転生して大活躍するという、「なろう小説」の元祖ともいえる、様々な要素が取り入れられた意欲作です。

この作品では「組織と人」が存分に描かれており、伝統的な日本企業によくあるタテ社会家の論理が分かってくるのです。

この記事では、前後編に分けてそのことを考察していきます。

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目次

聖戦士ダンバインとは

聖戦士ダンバイン」は、1983年2月から放送を開始したSFファンタジーアニメです。

本作品は、「機動戦士ガンダム」で有名な富野由悠季さんが総監督を務めています。

中世ヨーロッパをモチーフにした「バイストン・ウェル」を舞台に、「オーラバトラー」と呼ばれる人間型のロボット兵器が戦いを繰り広げます。

オーラバトラーのデザインは、曲線を多用した生物的なもので昆虫をモチーフにしており、それまでのアニメで見られたような直線的なデザインのロボットとは大きく異なる印象を与えます。

バイストン・ウェルは、中世ヨーロッパを思わせる城や騎士が存在し、コモンと呼ばれる人々や、フェラリオと呼ばれる妖精が暮らしている、現実世界とは全く異なる世界です。

そこでは、フェラリオの力を使い、オーラロードと呼ばれる現実世界とバイストン・ウェルをつなぐ道を開くことで、現実世界の人間を召喚することが出来ます。

バイストン・ウェルでは、現実世界の人間は、地上人(ちじょうびと)と呼ばれています。

地上人は、バイストン・ウェルに暮らすコモンよりも高いオーラ力(ちから)を持っています。

オーラ力とは、生命体の持つ精神エネルギーのことであり、オーラバトラーはこの力を動力源にしています。

地上人をパイロットにすることで、オーラバトラーはより強力な力を発揮することができるのです。

これを利用して自身の持つ軍事力の増強を図ろうというのが、本作の敵役であるドレイク・ルフトです。

バイストン・ウェルは、中世ヨーロッパを思わせる封建制国家郡によって成り立っているのですが、ドレイクは、そのうちの一つ、アの国の地方領主です。

ドレイクは野心家であり、アの国にとどまらずバイストン・ウェル全土の掌握を目論んでおり、その目的を達成するためにオーラロードを使って地上人を次々とバイストン・ウェルへと召喚し、自軍の戦力へと組み込んでいきます。

主人公のショウ・ザマは、日本に住む高校生だったのですが、オーラバトラー・ダンバインのパイロットとしてバイストンウェルに召喚され、後に反ドレイクの陣営に寝返って、ドレイク軍との死闘を展開していきます。

ここまでがざっくりとした作品紹介なのですが、本作品の登場人物の生き方・考え方を見ていくと、そこには伝統的な日本企業によくある「タテ社会家の論理の特徴が見えてきます。

「場」を強調する日本の社会集団

「資格」と「場」

「家の論理」というルールは、会社をはじめとする日本的な社会集団の特徴なのですが、その社会集団はどのように構成されているのでしょうか。

社会人類学者・東京大学名誉教授の中根千枝先生は、著書「タテ社会の人間関係」において、社会集団の構成の要因を、「資格」と「」に分けて考察しています。

「資格」とは、職業や血縁、身分などの個人の属性です。

インドにおけるカースト集団などは共通の資格による社会集団と言えます。

一方で、「場」とは集団を構成する一定の枠のことです。

地域や会社などの枠によって個人が集団を構成する場合は、「場」の共有による社会集団ということになります。

サラリーマンの場合で考えれば、経理などいった職種は「資格」であり、〇〇株式会社の社員というのは「場」ということになります。

そして、中根先生は日本における集団構成は、その人の「資格」よりも、「場」の共有によってなされていると、以下の通り述べています。

「日本人が外に向かって(他人に対して)自分を社会的に位置づける場合、好んでするのは、資格よりも場を優先することである。

記者であるとか、エンジニアであるということよりも、まず、A会社、S会社のものということである。

また他人が知りたいことも、A会社、S会社ということがまず第一であり、それから記者であるか、印刷工であるか、またエンジニアであるか、事務員であるか、ということである。

実際、××テレビの者です、というのでプロデューサーか、カメラマンであると思っていたら、運転手だったりしたなどということがある。」

(中根千枝 タテ社会の人間関係)

一つの会社には、営業、人事、経理と様々な職種がありますが、自己紹介をするときには、まず会社名を名乗るのが一般的ですね。

自分の所属している「場」を強調しているわけです。

そして、人付き合いは同じ会社という「場」に勤務している人を中心に行い、そこで濃密な人間関係を築くことになります。

一方で、「資格」を重視するようなこと、たとえば、経理業務を担当している人たちが、会社の枠を超えて連帯をするということはあまり聞きません。

日本の社会集団は、「場」を強調するものなのです。

生活共同体としての「家」

このような社会集団の考え方を代表するものは、日本の伝統的な「家」という概念です。

ここでいう「家」とは、現代の核家族ではなく、明治以前の日本にあった、商家や農家といった「生活共同体」のことです。

生活共同体とは、その家のメンバーが生活様式や生活の基盤を共有している、閉鎖的な集団です。

要は、家族と職場が一体化しているような集団のことです。

この「家」という集団では、同じ「場」にいる人同士が濃密な人間関係を作っていきます。

ここでは、他家から嫁いできた(血縁のない)嫁が重要に扱われますし、一方で他家に嫁いでいった(血縁のある)姉妹とは疎遠になります。

あくまでも自分たちの所属している「家」を中心に考えるのです。

そして、この「家」という集団の概念は、現代の会社まで引き継がれています。

そこには引き続き「家の論理」というルールが存在するのです。

ダンバインにおけるタテ社会

先にメンバーに加わった人の方が偉い

かつての「家」、現代の「会社」という「場」においては、そのメンバーは先輩・後輩という関係で組み合っています。

先にメンバーに加わったものが、上位に位置します。

このような関係を、中根先生は著書「タテ社会の人間関係」で、タテの関係と呼んでいます。

「家の論理」を持つ社会集団ではタテの関係が重視され、その集団のメンバーはタテの序列を強く意識するのです。

「聖戦士ダンバイン」においても、そのような場面が見られます。

敵役のドレイク・ルフトは、オーラロードを使って、3回に分けて地上人をバイストン・ウェルに召喚し、自分の軍勢に加えていきます。

まず1回目に、アメリカ人のショット・ウエポンゼット・ライトの2名を召喚し、技術者としてオーラバトラーの開発を任せます。

2回目に、主人公で日本人のショウ・ザマ、アメリカ人のトッド・ギネス、ロシア人のトカマク・ロブスキーの3名を召喚し、オーラバトラーのパイロットに任命します。

3回目に、アメリカ人のアレン・ブレディ、アイルランド人のジェリル・クチビ、中国人のフェイ・チェンカの3名を召喚し、彼らもまたオーラバトラーのパイロットに任命します。

このような順番で召喚をしたのですが、召喚が早かった、つまりドレイク軍に加わるのが早かった順番に、先輩・後輩の序列意識が生まれています。

たとえば、第1話で、1回目に召喚されたショットが、2回目に召喚されたメンバーたちにオーラバトラーの扱い方についての説明を行っている場面でのことです。

2回目に召喚されたメンバーの一人であるトッドが、ショットに対して、「しかし、ロボット工学の新鋭が、こんな所でこんな事をやっているとはねえ」と気安く話しかけます。

するとショットは、「口の利き方は気を付けた方がいい。私はこの地では高貴な立場だとトッドを注意します。

ショットには、最初に召喚された自分の方が先輩だという意識があったのでしょう。

ドレイク軍は、典型的なタテ社会なのです。

先輩としての焦り

その後に、今度はトッドが先輩としての意識を強く表す場面が出てきます。

第13話で、ドレイクは3回目の地上人の召喚を行います。

その様子を見ていたトッドは、召喚された地上人の中に、アメリカ空軍の士官候補生だった時の先輩であるアレンがいることに驚きます。

アレンたちが来たことで焦りを感じたトッドは、軍の上層部に無断でオーラバトラーを駆って出撃し、ダンバインを討ち取って手柄を挙げようとします。

トッドは出撃の際に、「ここに来てまで、アレンに先輩面をされてはたまるかよ!」と言います。

このセリフに、トッドの強い焦りが感じ取れます。

アメリカではアレンが先輩だったかもしれないが、バイストン・ウェルでは自分の方が先輩だと、トッドはそう意識しているのでしょう。

トッドの無断出撃の報告を受けたショットは、ろくな手柄を挙げてはいないのだ。こうして新たに地上人も来たとなれば、焦りもしよう。」「どうだろう、トッドの振る舞いに目をつむってはくれまいか?ドレイク様には私から取りなしておく。」と言って、トッドをかばっています。

かつてはトッドを注意したショットですが、今度はトッドの気持ちに理解を示しています。

トッドもショットも、先輩・後輩の序列意識を持っているのです。

トッドはそのような意識があるから先輩としての焦りを感じ、無断出撃に至ったのですが、ショットにもその心境は十分に理解できたのでしょう。

先輩・後輩の序列意識は日本の「家」においても見られます。

嫁姑問題が生じるのもこのためです。

嫁は「家」のメンバーに加わった順番が後の方になっているから、「家」の中では後輩扱いされます。

そのため、姑にいじめられるということも起こり得るのです。

後編でも引き続き、「聖戦士ダンバイン」を通して「タテ社会」と「家の論理」を見ていきたいと思います。

後編はこちら↓

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