映画｢遠すぎた橋｣｜｢たぶん大丈夫｣で済ませる上司と、その犠牲になる部下【無料で見る方法も紹介】

｢遠すぎた橋｣は、1977年に公開されたアメリカ・イギリス合作の戦争映画です。

この作品は、第二次世界大戦後期に連合軍が行った史上最大の空挺作戦「マーケットガーデン作戦」を題材にしています。

上層部の稚拙な作戦計画により現場の兵士が犠牲になる様子を描いており、サラリーマンにも共感できる作品となっています。

この記事では、本作の作品情報・見どころに加え、無料で見る方法も紹介していきます。

作品情報

概要

1944年9月に連合軍が行った史上最大の空挺作戦マーケットガーデン作戦を、90億円という製作費を投じて描いた超大作です。

ロバート・レッドフォード、ジーン・ハックマン、ショーン・コネリーなど、当時のトップスターが共演し、大脱走の“ビッグX”バートレット役でお馴染みのリチャード・アッテンボローが監督を務めています。

壮大なスケールの戦争スペクタクルであり、M4シャーマンなど第二次世界大戦の兵器の実物が登場する戦闘シーンや、オランダ陸軍の協力により撮影された空挺降下シーンには迫力があり、今でも語り草になっています。

スタッフ・キャスト

あらすじ

1944年6月にノルマンディーに上陸を果たした連合軍は、8月にパリを解放、9月にはベルギーの一部を占領し、怒涛の勢いでドイツ軍を追撃していました。

この急進撃で連合軍の補給線は600㎞にも達し、補給が追い付かなくなった結果、戦線はオランダ南部で膠着状態に陥ります。

イギリス陸軍の総司令官モントゴメリー元帥は、アメリカ陸軍のパットン元帥に強烈なライバル心を燃やしており、ドイツ本国への進攻を企図したマーケットガーデン作戦を推し進めて戦功を立てようとします。

モントゴメリー元帥の意を受けたブラウニング中将は現場の指揮官たちに作戦計画を説明しますが、戦闘経験の豊富な指揮官たちは稚拙な作戦計画に不安を募らせます。

それでもマーケットガーデン作戦は開始され、空を覆う輸送機の大編隊から無数のパラシュートが花開いていくのでした。

見どころ

見通しの甘い作戦

マーケットガーデン作戦とは、オランダを通りドイツへ続く進軍ルートを確保し、ドイツ本土への侵攻の足掛かりを作る作戦です。

作戦の内容は、先に空挺部隊をパラシュートで降下させてオランダ国内にある5つの橋を確保し、後からやってくる戦車部隊と合流して一番遠い橋のあるアルンヘムまで占領するというものです。

一見すると完璧な作戦なのですが、果たしてそう上手くいくでしょうか。

空挺部隊が持ち運べるのはせいぜい軽火器が限界であり、ドイツ軍の戦車が出てきたらひとたまりもなく、たちまち撃滅されてしまいます。

頼みの綱は味方の戦車部隊なのですが、最も遠いアルンヘムまでは100㎞の道のりで、ほとんどが一本道のため、車両の渋滞で予定通りに到着しないという可能性もあります。

細かいところをしっかりと詰めていかないと、上手くいかない作戦なのです。

ところが、この作戦は武勲を焦るモントゴメリー元帥により性急に立案されたものであり細部の詰めが甘く、作戦開始直後から思い通りに事が運ばず、作戦はグダグダに進行することになるのです。

組織の正常性バイアス

押井守監督のアニメーション映画「パトレイバー2」の中で、後藤隊長がこう語っています。

｢戦線から遠のくと楽観主義が現実に取って代わる。そして最高意志決定の場では、現実なるものはしばしば存在しない。｣

これはまさに、組織における正常性バイアスを表した言葉でしょう。

正常性バイアスとは、何か異常なことが起こった際に、｢大丈夫だろう｣と楽観的に考えて落ち着きを保とうとする、心のメカニズムです。

本作において作戦を指揮するイギリス軍のブラウニング中将(ダーク・ボガード)は、モントゴメリー元帥の命令を忠実に実行する官僚的な人物であり、典型的な正常性バイアスに陥っているのです。

ブラウニング中将は、アルンヘムのドイツ軍に戦車は無く、弱小部隊しかいないと信じ切っています。

これに対し、部下はアルンヘムにドイツ軍の戦車師団が潜伏している証拠写真を見せ、作戦の中止を進言します。

ところが、ブラウニング中将は｢(戦車は)多分動くまい｣と根拠もなく言って、｢この大作戦を中止しろというのかね、たった３枚の写真で｣と逆に問い詰めるのです。

強力なドイツ軍が潜伏しているという情報に対し、｢たぶん大丈夫｣で済ませるという、部下の命を預かる上司としては余りにもヒドすぎる言動です。

実際の作戦推移は部下の進言通りとなり、アルンヘムに降下したイギリス軍の空挺部隊は強力なドイツの戦車師団に包囲され、一人また一人と犠牲になっていくのです。

｢あの橋は遠すぎたな｣

本作では、上層部のヒドさがこれでもかと描かれているのですが、極めつけはブラウニング中将の｢あの橋は遠すぎたな｣というセリフです。

8,000人という大勢の部下を失った指揮官が、作戦の意義について疑義を呈したところ、ブラウニング中将はこの一言で片づけたのです。

アルンヘムの橋が遠すぎること、一本道の渋滞で増援が間に合わない可能性があること、そんなことは初めから分かっていたはずです。

部下の死など他人事としか思っていない、ヒドすぎる言動です。

｢最高意思決定の場では現実が存在しない｣ことの、格好の事例ですね。

このように、劇中のブラウニング中将を余りにもヒドい人物として描いたため、現実のブラウニング中将の遺族がアッテンボロー監督を訴えるという話も出たそうです。

会社においても、こういうタイプの上司は一定数います。

実現可能性の低い無謀な施策を打ち立て、その結果現場の人間に多大なしわ寄せが来たとしても、所詮は他人事だと思っています。

実際にその施策を行うのは自分では無いので、その施策が失敗に終わったとしてもまた同じようなことを繰り返し、現場の人間を苦しめていくのです。

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まとめ

本作を見ると、マーケットガーデン作戦がいかに甘い見通しであったかが分かってきます。

そんな甘い見通しに基づいて下される命令の犠牲になるのは、いつだって現場の部下なのです。

サラリーマンにとっても、他人事とは思えない、身につまされる作品なのです。

特に、部下を動かすポジションにいる人には見てほしい映画ですね。

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