「頭上の敵機」は、1949年に公開されたアメリカの戦争映画です。
第二次世界大戦中、イギリスに駐留しナチス・ドイツに空爆を敢行した「アメリカ空軍第918爆撃隊」の人間模様を描いています。
戦争映画ではありますが、派手な戦闘スペクタクルはほとんどなく、組織における人間関係をじっくりと描いた作品です。
企業研修の題材にされることも多い作品であり、本作を見ると「部下に対する本当の優しさとは何か?」ということを考えさせられます。
この記事では、そのことを考察していきます。
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作品情報
予告動画
スタッフ・キャスト
- 監督:ヘンリー・キング
- 原作:サイ・バートレット、バーン・レイ・Jr.
- 脚本:サイ・バートレット、バーン・レイ・Jr.
- 製作:ダリル・F・ザナック
- 撮影:レオン・シャムロイ
- 音楽:アルフレッド・ニューマン
- キャスト:グレゴリー・ペック(フランク・サヴェージ准将)、ゲイリー・メリル(キース・ダヴェンポート大佐)、ヒュー・マーロウ(ベン・ゲートリー中佐)、ミラード・ミッチェル(パット・プリチャード少将)、ディーン・ジャガー(ハーヴィ・ストーヴァル少佐)
部下に対する本当の優しさとは
「優しさ」が「ヌルさ」になる
本作に出てくるアメリカ空軍第918爆撃隊は、戦略爆撃を行う部隊です。
4基のエンジンを持つ大型の戦略爆撃機B-17を用いて、ドイツの軍需工場を叩くという任務を帯びています。
爆撃の効果を高めるため、明るい昼間に敵地に飛んで爆撃を敢行していますが、これは敵側からも迎撃がしやすく、多数の犠牲を払う可能性のある危険な任務です。
当初、この部隊の指揮官は、キース・ダベンポート大佐(ゲイリー・メリル)が務めていました。
爆撃部隊の指揮官は、会社で言えば中間管理職です。
ダベンポート大佐は部下に対する優しさにあふれ、部下からも慕われていました。
航法のミスによって数多くの戦死者を出す原因を作った部下に対しても、ダベンポート大佐は優しくフォローしています。
しかしながら、そのことが仇となって部隊の規律が緩み、作戦を行う度に、他の部隊に比べてはるかに多い戦死者を出していました。
「厳しさ」が部下を救うことも
そこで、ダベンポート大佐は指揮官を更迭され、新たに主人公のフランク・サヴェージ准将(グレゴリー・ペック)が指揮官として赴任してきました。
サヴェージ准将のやり方は、それまでとは方向性が180度異なるものでした。
部隊の規律を立て直すことから始め、部下たちに厳しく接して、任務遂行に必要なスキルの向上を求めていきます。
厳しい飛行訓練も徹底して行い、致命的なミスを犯した隊員は直ぐに交代させました。
このやり方には部下たちも非難轟々で、異動願を出す部下も出るほどの反発を招きます。
それでもこのやり方を続けたことで、次第に効果が現れてきます。
猛訓練のおかげで部隊の被撃墜率も下がり、戦死者も減少していったのです。
部下を厳しく鍛え上げることが、結果として部下の命を救うことに繋がっていたのです。
これこそが、部下に対する本当の優しさだったのです。
ドラッカーのリーダーシップとは
リーダーシップは仲間作りではない
サヴェージ准将のリーダーシップは、次のようなドラッカーのリーダーシップとも重なります。
①リーダーは真摯さと確信を持つ
信頼とは、リーダーを好きになることではない。常に同意することでもない。リーダーの言うことが真意であると確信を持てることである。それは、真摯さという誠に古くさいものに対する確信である
②リーダーシップは資質ではなく仕事である
リーダーシップとは人を引きつけることではない。仲間を作り、人に影響を与えることでもない。リーダーとはまず組織の使命と目標を見えるように明確にして他者に示すものである。そして目標優先順位や基準を決め、それを維持することが求められる。
③リーダーシップとは責任である
優れたリーダーは、常に厳しい。事がうまくいかないとき、そして何事もだいたいにおいてうまくいかないものだが、その失敗を人のせいにしない。
(「プロフェッショナルの条件ーいかに成果をあげ、成長するか P.F.ドラッカー著 上田惇生訳)
前任の指揮官のダベンポート大佐は部下たちから好かれていました。
上司と部下というよりも、仲間に近い関係だったのでしょう。
でもそれは、ドラッカーの述べているようなリーダーシップではなかったのです。
ダベンポート大佐と交代したサヴェージ准将は、厳しいリーダーでした。
そして、「戦略爆撃を行いドイツ国内の軍需工場を叩けば、戦争を早期に終結させられる」という自分たちの組織のビジョンを明らかにして、そのために必要な猛訓練も行いました。
自分たちの使命は何か、そのために何をすればいいのかを明確に示し、それをチームへと落とし込んでいきました。
その結果、これまでよりも戦死者は減り、より戦果を挙げられるようになったのです。
いつだって部下は分かってくれない
最近では「部下には厳しくしすぎないようにしている」という中間管理職も多くなっています。
でも、それは部下への優しさなのでしょうか。
本当は、部下に嫌われたくない、恨みを買いたくないから、ついつい部下に対して甘くなってしまうのではないのでしょうか。
部下を甘やかして、言った方がいいことも言わないというのなら、それは部下に対する本当の優しさではないと思います。
理想の上司というべきリーダーは、チームを成功に導いてメンバーを幸せにしてくれるリーダーです。
それが部下に対しての本当の優しさなのです。
本作でも、最初はサヴェージ准将に反発し異動願いまで出していた部下も、段々とサヴェージ准将に従うようになっていきます。
サヴェージ准将の言う通りに密集隊形での飛行訓練を徹底したことは、敵の迎撃機から身を守る上で大いに役立ちました。
「部下のことを思っていたらからこそ、猛訓練を行ったんだ」というサヴェージ准将の真意がようやく理解されたのです。
まとめ
この記事では、「頭上の敵機」を通じてリーダーシップのあり方を考察していきました。
本作には、部下が中間管理職の真意を理解していく過程がじっくりと描かれています。
上司も部下もお互いの相互理解を深めるために、本作を見ることをオススメしたいですね。
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