本書の著者は、㈱カオナビの柳橋仁機社長です。
本書は、顔写真をアイコンとする人材情報管理システムを開発した㈱カオナビの取り組みを取り上げています。
本書を読むことで、相手の名前をしっかりと把握することの重要性が分かってきます。
人の名前を覚えようとしない上司にも読んでもらいたい一冊です。
社員の「顔と名前の一致」が会社をどんどん強くする
「名前」の重要性
上司は名前を覚えよう
上司にとって、人の名前を覚えるというのは重要な仕事です。
仕事の指示を出すときに、その人の名前をしっかりと呼ばなかったら、その人は責任感を持って仕事をするでしょうか。
自然に名前で呼び合うことができない職場環境では、仕事をスムーズに進めることもできないでしょう。
人間は誰しも、他人から認めたもらいたいという承認欲求を持っています。
上司がしっかりと名前で呼びかけるということは、相手の承認欲求を満たしてモチベーションを高める最も基本的な手段となるのです。
歴史上の人物も「名前」を大切にしていた
歴史に名を残す人物は、人の名前を覚えることを何よりも大切にしていました。
「人たらし」の天才と言われた田中角栄元首相は、本省の課長以上の役人の氏名、経歴から、政治家で親しいのは誰かなど、それらを調べ上げた顔写真付きの「調査表」を作り、その内容をすべて覚えていたといいます。
その調査表を存分に活用して、多くの人の気持ちをつかんでいたのです。
また、D・カーネギーの著書「人を動かす」のPart2、人に好かれる6原則の3番目は、このようになっています。
「名前は、当人にとって、もっとも快い、もっともたいせつなひびきを持つ言葉であることを忘れない。」
(D・カーネギー「人を動かす」)
この章で取り上げられている歴史上の人物も、しっかりと相手の名前を覚え、一人ひとりの人格を尊重していました。
鉄鋼王のアンドルー・カーネギーは、友人や取引関係者の名を尊重し、自分の会社の従業員の名前を覚えていることに誇りを持っていました。
フランス皇帝のナポレオン三世は、紹介されたことのある人の名前は全部覚えていると公言していたといいます。
アメリカ第32代大統領のフランクリン・ルーズベルトは、大統領官邸を訪れた機械工の名前を、一度しか聞かなかったにも関わらず、しっかりと覚えていました。
このように、名前をしっかりと覚えることで相手の心をつかみ、多くの人を巻き込んで偉大な仕事を成し遂げていったのです。
人材情報管理システム「カオナビ」
効率的な人材管理の必要性
マネジメント層にとっても、人の名前と顔を一致させて人材を管理することは大切です。
しかしながら、コストや社内の資源の問題で、なかなかそのような人材管理ができないという問題があります。
著者も、ベンチャー企業の人事部長を務めていた際に、人材の管理に苦労していたことを語っています。
そこで、効率的な人材管理をするために生まれたのが、「カオナビ」です。
根底にあるのは、「人材は顔と名前をセットで管理すべき」という論理です。
カオナビの特徴
「カオナビ」は、クラウド型の人材情報管理システムです。
従業員の顔写真が並んだインターフェースで人材情報が管理できます。
カオナビを開くと、相手の顔やプロフィールが一目瞭然に分かるようになっていて、文字情報だけが並ぶシステムよりもイメージがつきやすく、記憶がしやすくなっています。
顔写真があることで、「この人とこんな話をした」と、顔とエピソードが紐付けられ、記憶の定着を促進する効果があるのです。
使い方によっては、SNSのように、個人の趣味や特技なども共有化できます。
共通の趣味を介して、これから働く人同士のコミュニケーションを促進するという効果も期待できます。
組織体制のチェック・見直しにも活用できます。
顔写真を並べて組織図を組み立てることができるので、組織ごとの人材バランスをチェックすることができます。
従業員を、スキルや特性で検索したり、所属部署や入社年などでリスト化することもできるので、プロジェクトメンバーに適切な人材を選出するなど、人材の入れ替えもスムーズに行うことができます。
カオナビを導入した企業の事例
本書では、実際にカオナビを導入した企業の事例も紹介されています。
アパレルメーカーの例では、マネジメント側が各地の店舗を回る際に、現地のスタッフと密なコミュニケーションを図るために、カオナビを活用しています。店舗のスタッフを名前で呼ぶことで、関係性の強化につながったというのです。
また、ヨガスタジオの例では、カオナビを導入したことで、時期や店舗にかかわらず目当ての人材のパーソナルな情報が手間なくピックアップできるため、人材育成のスピード感が格段にアップするという効果が生まれたとのことです。
本書には、これ以外にも、人の顔と名前を一致させることの大切さが分かる事例がいくつも記載されています。
まとめ
マネジメント側がしっかりと従業員のことを理解し、密なコミュニケーションを行わなければ、従業員もその職場で長く働こうとは思わないでしょう。
相手の名前を覚えるというのは、コミュニケーションの大切な一歩なのです。
本書を読むと、そのことが分かってきます。