「激動の昭和史 軍閥」は、1970年に公開された日本の戦争映画です。
東条英機首相を中心に、アメリカとの開戦へと向かっていく指導者たちの姿と、その状況下でのメディアの姿勢を描いた作品です。
そしてこの作品から、戦前の日本だけでなく現代でも起こりうる、組織を衰退させる3つの要素が分かってくるのです。
この記事では、そのことについて考察するとともに、本作を無料で見る方法も紹介していきます。
作品情報
予告動画
概要
激動の時代を生きた日本人の姿を描いた「激動の昭和史」シリーズの第2作です。
小林桂樹、加山雄三、三船敏郎ほか豪華キャストが共演し、大東亜戦争の記録映像も交え、2・26事件から原爆投下までの歴史がドキュメンタリータッチで描かれています。
戦闘シーンよりも、軍部や政府など、戦争に関わった指導者たちの描写に力点が置かれ、日本が戦争へと向かっていく経緯がよく分かるようになっています。
公然と政府批判を行った結果、陸軍に懲罰招集をされたという毎日新聞記者の実話に基づくエピソードも挿入されています。
スタッフ・キャスト
- 監督:堀川弘通
- 脚本:笠原良三
- 製作:藤本真澄、針生宏
- 撮影:山田一夫
- 美術:阿久根巖、育野重一
- 音楽:真鍋理一郎
- 編集:黒岩義民
- キャスト:中村又五郎(昭和天皇)、小林桂樹(東条英機)、垂水悟郎(武井軍務局長)、三船敏郎(山本五十六)、加山雄三(新井五郎)、神山繫(近衛文麿)、細川俊夫(島田繫太郎)
あらすじ
昭和11年の日本。
陸軍の青年将校たちが決起したクーデター、2・26事件は未遂に終わります。
そしてこの事件以降、軍部の政治進出が本格的になっています。
軍部は大陸への進攻を続けながら、国内体制を強化し総力戦体制を作り上げていきます。
泥沼化する日華事変の解決策として、軍部は南部仏印進駐を企てますが、その結果、アメリカの関係は決定的に悪化します。
日本の指導者層の間には、「アメリカとの開戦やむなし」という空気が蔓延していきます。
そこで何としても戦争を避けるために、東条英機内閣が発足するのですが…。
組織を衰退させる3つの要素
「裸の王様」に陥るリーダー
大東亜戦争に関しては、本作の制作時よりも事実検証が進んでいます。
あくまでも当時の歴史観に基づく描写であると前置きをしておきますが、本作では、東条首相は視野狭窄に陥ったリーダー、「裸の王様」として描かれています。
当初は、天皇陛下のご意向に沿って、米国との戦争を避ける方法を模索していたのですが、日米戦が始まるや否や、日本軍の快進撃のニュースに舞い上がり、戦争を拡大する方針へと転換していくのです。
武井軍務局長から「日米の国力差を考え、戦局が有利なうちに講和をすべき」と意見具申をされるのですが、その意見を怒鳴りつけながら突っぱねるのです。
そこで、武井軍務局長はこう切り返します。
「正直に申し上げて、近頃、閣下の周囲には正しい意見の具申をするものがほとんどいなくなりました。」
「何を申し上げても、お取り上げにならないからです。」
このセリフこそ、東条首相の「裸の王様」ぶりを良く表しています。
中国史上有数の名君であった李世民は、部下からの忌憚のない意見を喜んで受け入れ、常に自分を律していました。
ゴマすりばかりしているような部下を集めると、正確な情報も集まらず「裸の王様」になり、正しい意思決定ができなくなるということなんですね。
セクショナリズム
本作では、海軍の軍令部や陸軍の参謀本部など、血気盛んなエリートたちの言動も描かれています。
仕事熱心で真面目、優秀な人材ではあるのですが、世界情勢やアメリカの本当の国力など、大局を理解しているものはごくわずかです。
ただ自分の属する組織の利益を考え、その組織を維持繁栄させるために、全力を注いでいるのです。
真面目なエリートたちが自分の組織のために頑張った結果、国家全体を危機に陥れてしまったのです。
まさにセクショナリズムそのものであり、現代の企業においても企業全体の生産性を低下させるなど、大きな弊害をもたらしています。
都合の悪い情報の隠蔽
本作には、実在の人物である毎日新聞の新名丈夫記者をモデルにした、新井五郎という記者が登場します。
新井記者は報道班員として従軍するうちに、戦地での実態が大本営発表と全く異なることに気付き、国民に真実を伝えようとします。
そして、戦争後半の昭和19年2月に、
「勝利か滅亡か 戦局は茲(ここ)まで来た」
「竹槍では間に合はぬ 飛行機だ、海洋航空機だ」
という2本の記事を書き上げ、毎日新聞の一面に掲載します。
日本軍が劣勢に立たされている原因を冷静かつ客観的に分析した記事なのですが、このことが東条首相の怒りに触れ、陸軍に懲罰招集されてしまうのです。
日本という国のことを真剣に考え、当時の指導者の精神主義を批判した気骨ある人物なのですが、言論弾圧にあってしまったのです。
企業においても、企業が抱える問題を指摘する社員を左遷させる、つまるところ実質的な言論弾圧が行われることがあります。
そんなことをしていては、いずれ取り返しのつかない不祥事に発展することもあるでしょう。
そうではなく、トラブルなどの都合の悪い情報をしっかりと受け止めることが、企業の改革の原動力となるのです。
都合の悪い情報を隠蔽していては、問題の根本的な解決にはならないのです。
作品の配信状況と、オススメの動画配信サービス
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まとめ
本作を見ると、組織に弊害をもたらす「裸の王様に陥るリーダー」、「セクショナリズム」、「都合の悪い情報の隠蔽」という3つの要素が分かってきます。
これは現代の企業でも見られる要素であり、企業の意思決定を誤らせ、不祥事を引き起こすことにも繋がります。
本作は、そのことを学ぶための、とても良い教材なのです。
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